ホーム - 顕微鏡を学ぶ - 顕微鏡ことはじめ - 【第6回】

2010.11.24

顕微鏡ことはじめ 【第6回】その機能、使っていますか? 〜微分干渉観察編〜

無色透明のサンプルや生きている細胞などに適した観察方法としては、位相差観察のほかに、微分干渉観察(differential interference contrast ; DIC)があります。
「その機能、使っていますか?」の3回目、今回は微分干渉観察に焦点を当て、その仕組みと調整法をご紹介します。

微分干渉観察(differential interference contrast ; DIC)とは・・・

光はサンプルを透過する際、そのサンプルを透過した部位の「屈折率」と「厚さ」の違いによって、透過した光の進む距離に違いが生じます。その距離の違いを“光路差”といい、微分干渉観察は、この光路差を利用して無色透明なサンプルを観察する方法です。

下の図1は、微分干渉観察と位相差観察とで、神経系細胞(NG108-15)を撮り比べしたものです。微分干渉観察では、あたかも細胞の斜め上方から光を当てたように細胞の縁に影が付き、立体的に見えることがわかります。(図1 A)

図1 微分干渉観察と位相差観察の比較

図1 微分干渉観察と位相差観察の比較(拡大

このように、微分干渉観察と位相差観察とではコントラストの付き方や像の特性が異なります。観察の目的によって適した観察方法を選択するようにしましょう。

 

微分干渉観察

位相差観察

コントラストの付き方

サンプルの厚さの勾配にコントラストが付く

サンプルの境界や点にコントラストが付く

像の特性

立体感のある明暗、又は色のコントラストが付く
影の付き方に方向性がある

明暗のコントラストが付く
厚いサンプルでは、ハローが目立つ

コントラストの調整/選択

立体感のコントラストを微調整できる

ネガティブコントラストとポジティブコントラストを選択できる

分解能

高い

微分干渉観察よりも劣る(※a)

適したサンプル

微細な構造から大きな構造まで観察できる
サンプルの厚さは数百μmまで可能

微細な構造の観察に有効である
サンプルの厚さは10μm程度まで可能

プラスチック容器の使用

不可能

可能

表1 微分干渉観察と位相差観察の比較

(※a)位相差観察は、リングスリットにより照明光が制限されるため、分解能が微分干渉よりも劣ります。

微分干渉観察の原理

下の図2は、微分干渉観察時の顕微鏡光路を模式的に示したものです。 微分干渉顕微鏡には、コンデンサ側と対物レンズ側にそれぞれ微分干渉プリズム(以下、DICプリズム)があります。その2つのプリズムを挟むように2つの偏光板「ポラライザ」と「アナライザ」が配置されています。
まず、光源からの光は、ポラライザを透過して一方向に振動する光(偏光)に変換されます。そしてこの偏光は、コンデンサ側のDICプリズムによって二方向に振動する2本の偏光に分けられ、ほぼ平行にサンプルに当たります。しかし、2本の偏光は、わずかに進路がずれているため、サンプルの厚さが変化している部位を通るときには、サンプル内を通過する光の速度の違いにより、光路差が生じます。(図2-B (2))

図2 微分干渉観察の原理

図2 微分干渉観察の原理

そして、透明なサンプルを透過した2本の偏光は、対物レンズ側のDICプリズムによって再び同じ進路に合成され、アナライザを透過します。このとき、この2本の偏光(a、b)間に光路差があると、干渉という現象が起こり明暗のコントラストが生じます。
このように微分干渉顕微鏡は、サンプルの厚さの勾配による光路差をコントラストに変換することで、透明なサンプルの観察を可能にしています。

それでは、さっそく微分干渉顕微鏡の構成と、調整の方法を確認していきましょう。

微分干渉顕微鏡の構成(各部の名称)
ユニバーサルコンデンサ

ユニバーサルコンデンサ
(DICプリズム、ポラライザ内蔵)(拡大

微分干渉観察を行うには、

  1. 明視野観察用コンデンサの代わりに、ポラライザとDICプリズムを内蔵した「ユニバーサルコンデンサ」が必要となります。

  2. また、対物レンズよりも上方に、「DICプリズム(DICスライダ)」と「アナライザ」が必要となります。

顕微鏡外観画像

顕微鏡外観画像

1 2